製造ラインにおける水分検知や液漏れ検査で、「目視では濡れているのに、カメラを通すと水が消えてしまう」という現象に頭を抱えていませんか?人間の目に見える光(可視光)を使っている限り、どれほど高性能なカメラを導入しても水分を検知することは困難です。
本記事では、なぜ通常の画像処理で水が見えないのかという根本的な理由と、それを解決する「近赤外線LED光源装置」のメカニズム、実際に近赤外線LED光源装置を活用した水分検知・液漏れ検査事例を解説しています。
普段私たちが目にしている白・赤・青といった一般的なLED光源装置は、380nm~750nm(あるいは400nm~700nm)※1という波長域を持つ「可視光」に分類されます。この光には水を透過してしまう性質があるため、カメラには水そのものではなく「水滴の向こう側にある製品や背景」がそのまま映し出されてしまうのです。
その結果、背景と水滴の間に明暗差(コントラスト)が生まれず、画像処理ソフトはそこにあるはずの水を「異常なし(背景と同じ)」と判断してしまいます。
水分を検知できない問題を解決するために偏光フィルターを使用したり、照明を斜めから当てて水面のテカリ(正反射)を捉えたりする手法が試みられてきました。
しかし、これらの方法は「光の反射角度」に依存するため、ワーク(検査対象物)の形状が少しでも変わると光がカメラに届かなくなり、誤検知が頻発するという課題があります。安定した自動検査を行うには、光の反射に頼るのではなく、物理的な「光の性質」を利用したアプローチが必要不可欠です。
可視光では透過してしまう水を「黒く」映し出し、明確なコントラストを生み出す鍵となるのが「水の吸光特性」を利用した近赤外線LED光源装置です。水(H2O)には700nmより長い波長の光(特に1,450nm、1,940nm付近※2)といった特定の波長帯(水分の吸収帯)を吸収する性質があります。
この波長帯の近赤外線を照射すると、水分がある部分だけ光が吸収されてカメラには届かなくなり、画像上では「真っ黒」に映る仕組みです。水分がない乾いている部分は光を透過・反射して「白く」映るため、明確な明暗差が生まれ、安定した自動検知が可能になります。
近赤外線の波長帯は、大きくNIR(750nm~1,000nm未満)とSWIR(1,000nm~2,500nm未満)に分けられます※3。
水分検知で推奨されるのは、波長域が長いSWIR領域です※4。水の吸光度が特に高いため、よりくっきりとしたコントラストが得られます。
ただし、SWIR対応のLED光源装置は高価な傾向があるため、コストを抑えたい場合やシステム構成をシンプルにしたい場合には、比較的安価なNIR領域の照明を検討すると良いでしょう。
紙パック(市販品)についている水滴を確認するため、ユーテクノロジーが提供する近赤外線LED光源装置(850nm~1,650nm)を導入した事例です。背景となる紙パックの絵柄部分は光を反射させて白く飛ばし、水滴部分は光を吸収させることで、水滴部分のみを黒く可視化することに成功しました。
水分検知や液漏れ検査では、水が特定の近赤外線を吸収する性質を利用します。可視光では水分が背景と同化しやすく、画像処理で判定しにくい場合がありますが、水分が吸収しやすい波長を照射すると、水分のある部分だけが暗く映り、正常部とのコントラストを作りやすくなります。
特に、1450nmや1940nm付近は水分の吸収が大きい波長帯として知られています。ただし、検査対象の材質や厚み、背景色、カメラの感度によって見え方は変わります。水分検知では、対象物と水分のコントラストが最も出る波長を、実際のワークで確認することが重要です。
近赤外線LED光源装置には、比較的短い波長帯のNIR領域と、より長い波長帯のSWIR領域に対応したものがあります。水分をより強く吸収させて黒く見せたい場合は、SWIR領域の波長が候補になります。
一方で、SWIR対応の光源やカメラは、可視光や一般的なNIRに比べてシステムコストが高くなる傾向があります。検査対象が水滴なのか、含水状態なのか、微量な水分なのかによって必要な波長帯は変わります。検出したい水分量や検査精度、導入コストのバランスを見ながら、NIR・SWIRのどちらが適しているかを検討しましょう。
食品・医薬品・日用品などの包装材では、パッケージの印刷柄や色が水分検知の妨げになることがあります。可視光では背景の模様がそのまま映り、水滴や液漏れ部分との明暗差が出にくくなるためです。
近赤外線を使うことで、背景柄の影響を抑えながら、水分がある部分だけを暗く強調できる場合があります。特に印刷済みパッケージや紙パック、フィルム包装では、背景を飛ばし、水滴や濡れ部分を黒く可視化できる条件を探すことが重要です。印刷柄のあるワークでは、背景ではなく水分だけに反応する波長を選ぶことが、誤検知を防ぐポイントです。
製造ライン上で水分検知や液漏れ検査を行う場合、ワークが高速で搬送されるため、短い露光時間でも十分な明るさを確保する必要があります。近赤外線領域では、使用するカメラやセンサーの感度によって画像が暗くなりやすいこともあります。
そのため、LED光源装置を選ぶ際は、必要な波長を出せるだけでなく、カメラの感度やライン速度に対して十分な光量を確保できるかを確認しましょう。高速ラインで安定した水分検知を行うには、波長だけでなく、高出力で安定発光できるLED光源装置を選ぶことが大切です。
水分検知では、水分による吸収差を画像上の濃淡として判定します。そのため、照明ムラがあると、水分による暗さなのか、光源のムラなのかを判別しにくくなります。特に、広い搬送幅を検査する場合や、複数のワークを一括で撮像する場合は、照射の均一性が重要です。
検査幅全体にムラなく光を当てられるLED光源装置を選ぶことで、画像処理のしきい値を安定させやすくなります。水分や濡れ部分を安定して検出するには、高輝度であることに加え、照射ムラの少ない均一な光源を選ぶ必要があります。
水分検知では、LED光源装置だけでなく、カメラやレンズ、光学フィルタとの組み合わせも検査精度に影響します。水分が吸収する波長を照射しても、その波長に対応したカメラでなければ、十分な画像コントラストを得られません。
また、周囲光や不要な反射光が混ざると、水分部分の濃淡差が弱くなることがあります。必要に応じてフィルタを組み合わせ、目的の波長だけを捉えやすい光学系にすることも検討します。LED光源装置・カメラ・レンズ・フィルタを一体で確認し、水分の見え方と画像処理の判定しやすさを検証することが重要です。
水分検知といっても、検出したい対象は、水滴、液漏れ、濡れ、含水、乾燥ムラなどさまざまです。表面に付着した水滴を検出する場合と、紙や食品、粉体などに含まれる水分量を確認する場合では、適した撮像方法や照明条件が異なります。
水滴や液漏れの有無を検出する場合は、対象物表面の水分を暗く強調できる反射方式が候補になります。一方、材料内部の含水状態や水分量分布を見たい場合は、ラインセンサカメラや分光情報を用いた検査も検討されます。水分の「有無」を見たいのか、「量」や「分布」まで見たいのかによって、選ぶLED光源装置と撮像方式は変わります。
水分検知・液漏れ検査に適したLED光源装置は、検出したい水分の状態、対象物の材質、背景柄、ライン速度、検査幅、カメラの感度によって変わります。カタログ上の波長や明るさだけで判断するのではなく、実際のワークを用いて、波長・光量・照射方式・均一性・撮像条件を確認しながら選定しましょう。
「目視では濡れているのにカメラでは水滴が消えてしまう」「印刷柄や背景に埋もれて液漏れが見えない」「NIR・SWIRのどの波長を選べばよいかわからない」など、水分検知では、対象物の材質や背景、検出したい水分量によってLED光源装置に求められる性能が大きく変わります。
だからこそ、検査目的に合ったLED光源装置を選ぶことが、水分や液漏れの見逃しを防ぐ第一歩です。自社の水分検知・液漏れ検査や外観検査の条件に合うLED光源装置選びにお役立てください。
検査工程では、用途に応じて必要な明るさで対象を照らすことが求められます。
しかし目的によって必要な光の条件が異なり、装置の選定に迷うケースも少なくありません。
こうした現場での課題に応えるため、検査目的別に適したLED光源装置をおすすめ3選を紹介します。